ゲームセンターでメダル10,000枚獲得した私の結末その1
これは私の毛もふさふさだった小学生時代のお話である…
私含む同級生のほとんどは、学校帰りにアピタの中に入ったゲームセンターに通っていた。
フードコートの隣にある小さな小さなそのゲームセンターは小学生の私たちにとって、
最高の興奮を与えてくれる遊び場だった。
しかし、遊び場と言えどゲームセンター内も立派な競争社会。貧乏もいれば富豪もいる。
メダルをより多く持っている人は強く、持っていない人は弱かった。
そのため、校内で謙虚にしている子が、ゲームセンターに到着すると急に人を見下すこともあった。
私は小学生ながらに<性格はお金(メダル)で簡単に変わってしまう>と理解したのだった…
ゲームセンターで生き残るために
当時、お小遣いが100円~500円程だった私にとって、ゲームセンターは高級な遊びだった。
100円でメダルが10枚吐き出されるが、運が悪ければ3分も経たないうちに使い切ってしまう。
あまり大きな声では言えないが、ゲームセンターで生き残るために、色んなことをやった。
・メダルの払い口にたまたま残ったメダルの回収
・機械に腕を突っ込みM(メダル)スポットに振動を与え、落ちてきたメダルの回収
(危険なので、良い子は真似しないよーに!)
・機械のバグを利用したメダルの荒稼ぎ
今でこそ恥ずべき行為だと感じるが、当時は必死で、富豪たちにどれほど見下されたことか…。
それでも私たち貧乏人は、いつか見返してやると心に誓い、恥を捨てメダルを回収したのだ。
戦いの舞台はポーカーゲーム
機械のバグを利用したメダルの荒稼ぎにより私は、200枚ほどのメダルを保持していた。
しかし、当時の富豪たちは数千枚のメダルを保持しており、私は富豪の仲間入りはできなかった。
それでも、カップに並々と入ったメダルを持つことは初めてで、その重みに心躍り、
少し胸を張ってゲームセンターを練り歩いたものだ。
そして200枚のメダルを持った私は、大好きなポーカーゲームに挑戦した。
「俺を馬鹿にしたすべての者を見返してやる」
そんなことを考えながら自らを鼓舞していた私は一発逆転を夢見て、最高ベット枚数10枚を投入した。
1枚からベットできるポーカーゲームに10枚ベットするのはまさに富豪の遊び方だった。
10枚ベットし終わると自動でゲームが始まった。
いつもは1枚しかベットしないため、ボタンを押さなければゲームは始まらなかったのに、
ただメダルを入れただけで自動で始まるなんて…まるで富豪になった気分だった。
ポーカーゲームで最高はロイヤルストレートフラッシュという役だ。
最低はツーペアー。まぁ、細かい内容はいいとして…、まるで当たらなかった。
機械の裏でいたずらっ子が操作していると思うほどに当たらなかった。
20分も経たないうちに私は最後の10枚を手に取っていた。
<神様は最後に必ず微笑む>
そう心に願うと私は、最後の10枚を投入し、いたずらっ子にいたずらをされると、
富豪に笑われながらアピタを去った。
絶望の始まり
どうせすぐ貯まる。なぜなら私は機械のバグを知っているからだ。
このバグを利用すれば1分間で平均5枚は稼げた。そう、皆知ってるピッタンコザウルスだ。
※↑の動画は綿菓子さんからお借りしました※
なけなしの100円をはたいて10枚のメダルを手にした私は、早速ピッタンコザウルスへ向かった。
映像でも分かるように、2枚入れると母親が登場し、3枚入れると父親が登場する。
そして恐竜の背中にメダル枚数が書かれているため、タイミングを合わせてボタンを押し、
恐竜の背中に当たれば、背中に書かれたメダル枚数が獲得できるというものだ。
一見、どこにでもありそうなこの台には致命的なバグがある!
「1・10・1」の10が右に移動したときに親父の持ってる吸盤で狙えば8割の確率で10枚をゲットできる
「2・7・2」の7が左に移動したときに母親の持ってる吸盤で狙えば8割の確率7枚をゲットできる
ふふふ…私は完ぺきにピッタンコザウルスを熟知しており、確実に増やす自信があった。
そして「1・10・1」が予定通りにきて、父親の持ってる吸盤で狙って外した。
まぁ20%を引いただけだと考え、またメダルを注ぎ込む。
「1・10・1」が予定通りにきて、父親の持ってる吸盤で狙って外した。
20%を2回引くのはそんなにも珍しいことではない。
「2・7・2」が予定通りにきて、母親の持ってる吸盤で狙って外した。
そう、バグは完全に修正されていた。
私は、最後の1枚を入れた後、まるで屍のようにゲームセンター内を歩き回る。メダルを拾うために…。
ゲームセンターの冷たい床に顔を擦り付けながら、機械の下に落ちているメダルも見逃さない。
富豪からこぼれ落ちたメダルも見逃さない。
私は五感を研ぎ澄ませ、メダルの落ちる音に集中し続けたのだ。
そしてかき集めたメダルは十数枚。ピッタンコザウルスにはもう行かなかった。
200枚のメダルがすぐに吹っ飛び、屈辱を味わったポーカーに挑むこととした。
初めは少しでも長くこの時間を味わっていたくて、1枚ずつベットして楽しんでいたが、
<刺激が足りない!>と感じ、禁断の10枚ベットに出た。その直後だった。
…そこから30秒間ほどの記憶が私にはあまりない。
覚えているのは周りの絶叫と、ポーカーで50枚以上当たった人だけが聞くことのできる音のみだった。
そう、私はMAXベットで最強の役<ロイヤルストレートフラッシュ>を当てたのだ。