美女と野獣を見ていない僕の想像物語~終わり~
美女と野獣を見ていない僕の想像物語~始まり~
~第三章~
布団にくるまり、あまりの出来事にガタガタと震えていたひろやも、遂に疲れ果て眠りについた。
・・・
魔女「・・・ククククク。坊や。私のホウキを壊した罰よ。クックックック」
ひろや「お・・・お前が俺をこんな姿にしやがったのか!元に戻せ!!」
魔女「・・・ククククク。坊や。私のホウキを壊した罰よ。クックックック」
ひろや「おい、聞いてんのか!元に戻せよ・・・」
魔女「・・・ククククク。坊や。私のホウキを壊した罰よ。クックックック」
ひろや「うぅ・・・俺が悪かったよ。頼むから元に戻してくれよ」
魔女「・・・ククククク。いいわよ。私のホウキを作り直すことができればね。クックックック」
こうして目を覚ましたひろやは、とりあえず「魔法のホウキ 作り方」とスマホで検索してみた。
そして、ある程度の作り方を知ることができたひろやだったが、材料は天下のAmazonでも取り寄せることができない代物ばかりだった。
どうやって集めようかと途方に暮れていると、さっさからLINEが入った。
さっさ「うちの親が象牙を買ったから見に来いってさ~高いらしいよ~」
ひろや「それどころじゃねーって!こっちは象牙よりも立派な牙が生えてるっつーの!ってか、手伝ってほしいんだけど」
ひろやは、ホウキを壊したことや魔法をかけられて野獣になったことを、ありのままにさっさに伝えた。
さっさも初めこそ冗談だと思っていたが、LINEのテレビ通話を交えて実際に野獣になったひろやを目の当たりにしたことで信じ、魔法のホウキ作りに条件付きで協力することを伝えた。
ひろや「条件ってなんだよ?もったいぶらずに早く言えよ」
さっさ「笑わないで聞いてね。私、美女になりたいの。どんな人でも羨むほどの、世界一の美女に。」
ひろや「吹いた!なんだよそれ」
さっさ「かっちーん。絶対手伝ったらんでね」
ひろや「嘘だって!ジョークジョーク。冗談だよ。そんなことお安い御用だってば!」
こうしてさっさは魔法のホウキの材料集めを約束し、ひろやはさっさを世界一の美女にさせることを約束した。
~第四章~
近所のあの子も新社会人になるほど月日は流れ、あの日の約束から1年が経過しようとしていた。
さっさは魔法のホウキの材料を集めるため、地獄の杉と名高い、<喋り杉・笑い杉・怒り杉・泣き杉・聞き杉・見え杉>を、生と死の狭間でもがき苦しみながらも、人前に出たくないというひろやの気持ちを汲み取り1人で回った。
そして、遂に全ての材料を揃えたのだ。
一方のひろやは、さっさが材料を集めている間、ひたすらに座禅を組んだ。
<美しいとは何か?女とは何か?>
人類が始まって以来、誰もが導き出すことのできなかった問いに対し、毎日毎日、寝る間を惜しんで真剣に考え続けた。しかし、まだひろやの中では納得のいく答えを出せていなかった。
さっさ「魔法のホウキを作る材料手に入ったよ!これで、元の身体に戻ることができるね!」
ひろや「本当に助かる。ありがとう。俺もさっさを美女にさせる方法、もう少しで思いつきそうだ」
こうしてひろやは、魔法のホウキを作りつつも美女になる方法を考えた。
近所のあの子も子供が生まれるほど月日は流れ、あの日の約束から6年が経過しようとしていた。
ひろや「つ・・・遂にできた!完成だ!やった!!俺は元に戻れる・・・元に戻れるんだあああ!!!」
さっさ「良かった。本当によかった。ひろやが元の姿に戻れて、私、本当にうれしい」
ひろや「ありがとう。さっさがいなければ、俺はとっくの昔にこの世から姿を消してたよ・・・。」
さっさ「そんなこと・・・悲しくなるから言わないでよ」
ひろや「何だか、照れるな。あ、そういえば、俺、ずっとさっさを美女にする方法を考えてたんだ。そして、このホウキが完成したと同時にようやく気付いた。何で俺っていつも、ギリギリにならないと気付けないんだろうな。」
さっさ「本当?あの約束守ってくれるときがきたんだね!嬉しい!」
ひろや「うん。俺が思うにさ、さっさは既に紛れもなく世界一の美女なんだよ。」
さっさ「え?どうゆうこと?」
ひろや「いや、さ、この数年の間、ずっと俺のことだけを考えて行動してくれたじゃん?俺、お前のことが好きになっちまったよ。そう、お前の心は世界一の美女ってこと」
さっさ「ありがとう・・・」
~第五章~
こうして互いの約束の結果を言い合った2人。
今晩は野獣である最後として、さっさが丹精込めた手料理をふるまった。
さっさ「はい、どうぞ。今日はとても良い日だからね。トリュフにフォアグラ、キャビアまで用意したのよ。沢山食べてね」
ひろや「うんめぇ~!こんなにもうんめぇ~飯は久しぶりだ!」
無我夢中で用意された食事を頬張るひろや。
その姿を微笑ましく見守るさっさ。
とても幸せな空間が2人を包む。
ひろや「あ~!メッチャ食べたら眠くなってきた。あ~ダメだ・・・げんか・い・・」
ひろやはテンションが上がり過ぎたせいか、あろうことか食事中に眠ってしまった。
さっさ「もう、ひろやったら!こんな寝方じゃ、ダメじゃない」
チュンチュンチュンチュン・・・
スズメが鳴いている。
窓から太陽の木漏れ日が入って眩しい。
あぁ、
俺は一体何時間寝たんだろう?
永遠に覚めない長い夢を見ていたような気分だ。
あ、顔が痛い
はしゃぎ過ぎたせい、か?
ん?床が赤い?
さっさ「あ、おはよ~!よく寝たね~!」
ひろや「おっはよ~・・。何か顔が痛いんだけど~・・。あれ?手に持ってるの何?」
さっさ「何って、アナタの牙よ。約束は守らないとね」
こうしてさっさは牙を売ったお金で整形し、世界一の美女となった。